不連続終活小説 Nさんのエンディング⑯
- iwata-hiroki
- 2022年12月23日
- 読了時間: 2分
「他に、株とか投資信託とかはお持ちじゃないですか?」
「いいえ、他には何にもありません」
「そうですか。ありがとうございました」
と言って、私はシートをめくって備考欄を開いた。
このまま何もしないでNさんが亡くなったとすると、遺産はすべてNさんの弟が手に入れることになる。遺言書をつくりたいということは、そうはしたくないということを意味する。何か嫌な予感がした。
「ざっと、7500万円の財産をお持ちのようですが、これをどのようにしたいっていうのはもうお決まりですか?」
あまり間を置かず、Nんさんははっきりといった。
「だいたいはユニセフに寄附したいんです。それから、弟にも少し。遺留分っていうのがあって、全部を他のところにというわけにはいかないんですよね?」
自分でも少し調べたというだけあって、彼女はそんなことを口にした。だが、実際には兄弟姉妹間の相続で遺留分は発生しない。したがって、財産をすべてユニセフに遺贈したとしても、誰からも文句を言われる気遣いはない。ちなみに、2019年の民法法改正により、それ以前は遺留分減殺請求権といわれていた権利が遺留分侵害額請求権へと変わった。つまり、旧法下では贈与や遺贈を受けた財産そのものを返還するという「現物返還」が原則で、金銭での支払いは例外的なものだったが、改正後は金銭請求に一本化された。また、遺留分侵害額請求を受けた人が、金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができるようにもなった。
「そうですか。でも、いいわ。せっかくそう決めたんだから、弟には2000万円ぐらい遺すことにします」
Nさんは、多少投げやりな様子でそう言った。
※この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一部を除いて関係ありません。
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