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iwata-hiroki

不連続終活小説 Nさんのエンディング⑨

自筆証書の場合、専門家のチェックを受けることなく作成できてしまうので、内容が不明確だったり、実現できない内容が含まれていたり、あるいわ形式が民法の要件を充たしていなかったりして、往々にして争いのもとになる。つまり、その遺言の内容に満足しない相続人から、「そんな遺言は無効だ」とつけ込まれるスキが多分にあるということだ。法廷の場で筆跡鑑定が求められるのは、「お父さんが私をないがしろにして、こんな遺言書くはずがない」、「だれかに無理やり書かされたに違いない」、「何とかなかったことにできないかなぁ」、「民法には全文自筆で書かないといけないと書いてある」、「お父さんの字って、こんなだったかなぁ」「よし、無効を主張しよう!」というような思考回路によるものだ。公正証書によれば、こうした争いはかなりの部分回避できる。よく、「ウチは家族みんな仲よしだから大丈夫」というようなことを耳にするが、そんなことはいざ相続が始まってみないと分からない。相続争いのリスクは、なるべく避けておきたいところだ。


※この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一部を除いて関係ありません。

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