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不連続終活小説 Nさんのエンディング④

 愛知県郊外の借家で一人暮らしをしていたKさんは、近くの畑から勝手に野菜を失敬する、真冬にノースリーブのワンピースで近所をうろつく、一晩中洗濯機を回し続けるといった奇行が目立つようになり、ついにはタバコの火の不始末でボヤ騒ぎを起こし、老人介護施設に入所することになった。その施設入所契約の必要から後見開始の申立がなされ、家庭裁判所の審判を受けて私が後見人になったというわけである。

 Kさんは無事に施設に入所でき、医師の診断からも、もう自宅に帰って独居できる見込みはなかった。こうなると、速やかに借家契約を解除して余計な家賃を払わなくていいようにしなければならない。Kさんが住んでいた古い一軒家は、管理会社が間に入っているということはなく、所有者から直接借りていたようなので、早速連絡を取ると、大家はKさんとの折り合いが決してよくなかったことを匂わせつつ、こころよく解約に応じてくれた。その際、当然ながら原状回復義務の履行を求められた。

 打ち合わせのために大家の家に行く途中で、そのすぐ近くにあるKさんの自宅内に現状確認のために入ってみて驚いた。よくテレビのワイドショーで見る光景さながらに、何が詰まっているか分からないゴミ袋、汚れてボロボロになった衣類、洗っていない食器が部屋中に散乱し、万年床を取り巻くようにタバコの吸い殻やペットボトルや色んなゴミが落ちていた。障子や襖は破れ、壁も汚れている。「現状回復って言ってもなぁ・・・」。私は頭を抱えた。


※この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一部を除いて関係ありません。

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